2014.08.18

日本らしいサッカーについて考える


元メキシコ人監督アギーレが、日本代表監督に就任。
そして、日本にとうとうやってきました。

 

日本人に体格が近い、メキシコ人を擁して、Wカップで2度ベスト16という結果を出した監督。短いパス回しや2.3人目の動きを用いながら、走力を活かしたチームをつくっている印象があります。
今回のWカップで話題に上がった「日本人らしい」サッカーを、進化させてくれることが期待されています。

 

さて、今日は、これから次のWカップに向けた新しい4年間がはじまる前に、
「日本人らしさ」を追求するサッカーについて考えてみようと思う。

今回Wカップで、僕が印象に残ったのは、選手たちが、「自分たちらしいサッカー」という言葉を良く使っていたことだ。

 

ザッケローニ監督「自分たちのサッカーができなかった」
長友佑都「自分たちのサッカーができなくて、厳しい試合になった」
吉田麻也「自分たちのサッカーができるかどうか、自分たちの持っているものを出せるかどうかだと思います。」
長谷部誠「相手のプレーがよかったというよりも自分たちのサッカーができずに負けてしまった」
本田圭佑「自分たちのスタイルも貫けなかった」
・・・

 

今までサッカーではあまり語られることのなかった「自分たちらしさ」というアイデンティティを問う選手と世論が生まれたことは、サッカーの歴史的に見ても大事な大会だったのだと思う。

残念ながら、今回、結果は出ませんでした。3試合やって、2敗1分という成績は、多くの人にとって、期待していた成績ではなかったと思う。かといって、今までの4年間が否定されるわけでもないし、次の4年を考える上でのヒントをたくさん感じた大会でもありました。

 

普段、企業のブランディングやデザインの仕事をしている僕には、その企業らしさ、その商品らしさ、「らしさ」という言葉については、日常的に良く考える問いです。それを踏まえて、3つのことについて考えました。

 

1.「自分らしさ」を追求したからと言って、勝つとは限らない

 

サッカーは、1試合の中で「勝ち」「負け」を決めるスポーツだ。
そして、勝ち負けとは、自分だけで決まるものではなく、相手含めてのものだ。
相手が、日本の良さを消せば、日本の良さは出しにくくなるし。
90分間日本タイムになることなどほとんどない。

そして、何より・・・

 

「自分らしさを出し続けたら勝つのだろうか?」

 

ここの前提に先ず、疑問を持たないといけない。

企業が、自分たちらしい商品を出したら、必ず顧客に受け入れられるかといえば、それは違う。顧客の気持ちや状況、時代によって受け入れられるものは違ってくる。
その時の状況に合わせて、相手をしっかり見た上で、どうするかが常に求められる世界だ。

「自分らしさ」は、「相手」「社会(時代)」と共に考える議論であるし、
「自分らしさ貫く=勝利」ではない。
その前提で、「自分らしさ」について考えないといけない。

 

2.ブランド企業を参考にする「自分らしさ」のアプローチ

 

1.を踏まえて、考えたいのは、ブランド企業の戦略だ。
今年、アップルコンピュターの初期デザインを行った、フロッグデザイン創業者のエスリンガーさんと話すきっかけがあった。
お話を聞いて驚いたのは、今より20年前には、もうipadの原型のプロトタイピングをつくっていたことだ。彼らは、未来を予測して、そこで受け入れられるものを事前につくっている。

イタリアン家具のカッシーナもそうだ。カッシーナのデザインチームは、
2020年に流行る家具は何か?という視点を持ち、今、もうデザインをしているだろう。そして、プロダクトがあるからといって、今この時代に、商品をだしたりしない。

そこにあるのは、「自分らしさ」の追求しつつも、その時代にデザインが受け入れられるかどうかを判断する冷静なビジョンだ。

どんな時代でも、「自分らしさ」を追求した成果物をつくる(追求をやめることはない)、そして、「社会(時代)」に合わせて、最高のタイミングで、出す。

自分らしさの向き合い方として、
プロフェッショナルとしての仕事のアプローチは参考になる。

 

3.「自分らしさ」を貫く「勇気」を持つこと。それが「文化」になる。

 

日本代表らしさって問われると、ほとんど答えられる人はいないかもしれない。
かつて岡田監督は、「接近・展開・連続」のコンセプトを出したし、
本田は、ワールドカップ期間中に、自分たちのサッカーを表現するために、
「ポゼッション」という言葉を用いた。

キーワードレベルで言えば、
「接近」「連続」「走力」「ショートパス」「二列目・三列目の動き」「ショートカウンター」等々、上がるだろう。
これらを、しっかり皆で議論して熟成させていく「場」は今まで以上に求められていくだろう。

 

その上で、勝敗を常に求められる世界の中で、自己のアイデンティティをあえて貫く挑戦をし続けないといけないと思う。

 

勝ち、負けにしか興味がない人には、日本代表が負け続けたら関心を失い、
人気を失うかもしれない。それは、すなわち、収益・経営の悪化につながる。
それはとても怖いことだ。かといって、目の前の試合に迎合した試合をし続けたら、自分らしさを貫く戦い方は、永遠にできない。

勇気を持ってそれを貫いた時、それは、「文化」として根付いていく。
イタリアのカテナチオ、スペインのショートパスサッカーなど、誰もが想起する「文化」もったサッカーはとても強い。企業文化を持つ企業が強いのも同じである。そして、結果として、世界中の人がイメージしやすく、ファンをたくさん集めている。

日本も、勇気を持ちながら、貫き、日本文化に根ざしたサッカースタイルをつくる時がきたのだと思う。

 

まとめ

自己のアイデンティティと向き合いながら、時代に合わせて柔軟に対応しながら、進化を検討する。
その哲学の背景に、2018年、2022年の中長期の計画の元、時代で、主流となるサッカーや、その次代で通用するサッカーの分析、日本がやりたいサッカーを実現するための必要な人材の育成まで、トータルにシナリオを描く力。
受身の日本サッカーではなく、文化をつくるフェーズに入った日本サッカーはこれらが、今まで以上に求められてくるだろう。

 

監督や協会にはとても高度な舵取りが必要になる。

 

変化が激しい時代、企業もサッカーも求められているのは同じである。

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